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【コロナウイルス 新型肺炎が引き起こす 中国の新たな危機】

2020/04/20

中国政府は27日、新型コロナウイルスによる死者が81人になったと発表した。患者数は3000人に迫る。発熱のないまま死に至ることもある。
武漢の医者たちは、感染は6000人を超えるのではないかと予想しているという。これほどの事態が、中国社会をどう変えるのか?

1000万人を超える都市とその周辺地域の封鎖は、映画「バイオ・ハザード」を思い起こさせる。地域に残った人々は見捨てられたと感じるだろう。人権の問題はないのか?国民は政府をどう見ているのだろう?

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閑散とした中国・武漢駅(2020年1月23日撮影)。(c)HECTOR RETAMAL / AFP

今回最も、責任を問われるべきなのは、「初動の遅れ」だ。
最初の患者の発生は武漢で、12月8日。にも関わらず中央政府の国家衛生健康委員会が把握したのは30日。海鮮市場の閉鎖は今年1月1日。

当初は、「肺炎の感染」に関するSNSなどの書き込みは削除された。民衆の不安を煽る、という理由だ。フィナンシャルタイムズによると、地方のメディアは中央政府の発表通りを伝えるよう強制され、1月初めには感染拡大の情報をSNSにあげた人々8人が拘束されたという。

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1月21日には武漢市で春節を祝うイベントを開催し、河北省のトップである党書記や省長が出席した。芸能人の歌や踊りを交えたイベントは多くの観客を動員した。

河北省政府が、武漢から出る鉄道や飛行機を止めたのは、翌々日の23日。
最初の患者発生からひと月半経っている。

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新型コロナウイルスの死者数、感染者数、感染疑い例をまとめた図(2020年1月23日作成)。(c)AFP

武漢は重工業の集まる工業都市で、出稼ぎに来ている人も多い。春節の帰省のピークは20日で、すでに多くの人々が故郷に帰っていた。
25日に「封鎖」の範囲を省全体に広げたが、実効性はあるのか?

また、政府が本当の情報を公開しているのか?という疑問の声は大きい。
「食糧や薬品の備蓄は十分だから買い占めをしないように」と言われても、政府の言葉を信じる使途は少ない。海外メディアに流れる空っぽのスーパーの棚を見れば一目瞭然だろう。

具合が悪くなって病院にいっても、満員だとして追い返されたと言う声も流れている。
北京政府は、25日、武漢市に、新型肺炎の患者を集中して受け入れる臨時病院を約10日間のうちに建設し、感染の封じ込めを行うとしているが、本当にできるのか?

最初は「ヒトから人への感染はない」としていたが、感染が見つかり、ついには病院の医師も死亡が確認された。

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新型コロナウイルスの症状をまとめた図(1月24日作成)。(c)AFP

感染は中国全土に広がり、日本、韓国、タイ、ベトナム、サウジ、アメリカ、カナダ、豪州にまで、広がりつつある。
中国人は「日本の方が安全と約70万人が日本へ旅行に来ている」というレポートもある。去年の春節の日本への旅行者は72万人だった。

2002年中国で発生したコロナウイルスによる重症急性呼吸症候群SARSは世界に広がり、8096人が感染。死者は774人に登った。致死率は9.6%。

2012年、中東で発生し、ラクダを通じて広まったコロナウイルスによる呼吸器症候群MERSでは感染者は2442人だったが、842人が死亡。致死率は34.5%という高さだった。

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中国・武漢の薬局で、防護服とマスクを身に着けて接客する店員(2020年1月25日撮影)。(c)Hector RETAMAL / AFP

SARSの経済的損失は中国のGDPのうち、300億ドルにも登った。この時にはまだ中国経済は成長率10%を誇る上昇気流の中にあり、大きな打撃にはならなかった。
しかし、現在中国経済は、鈍化し、政府は負債に悩む。この経済的負担を吸収できるのか?

SNSの記事削除の仕方は、地方政府への怒りが大きく、「省のトップは辞任しろ」などが削除されていない。

責任は地方政府に取らせて終わりにしたいという中央政府の思惑があるのかもしれない。

しかし、すでに事実上「閉鎖」状態に置かれている中国の都市や地方には四千万人が住んでいる。すでに、地方政府の枠を超えているのではないか?

ワクチンを作ろうとする動きもあるが、すぐにはできない。数ヶ月はかかるだろう。工場に急がせても、医薬品が足りなくなる可能性も高い。その間に人々の不満や不信はどんどん蓄積されていく。

中国政府にとって、今、何よりも怖いのは国民の政府への不信感だ。
プライバシーや言論の自由を代償に「社会の安全」を優先させてきた「監視社会」が、実は国民の命を守るものではないと国民が感じたとき、それは、大きな代償を伴うだろう。

しかも、今後、ますますひどくなる経済の悪化は国民の目から隠しようがない。

新型肺炎という病気そのものよりも、それに伴うパニックや、経済的打撃と、政府への不信感が、中国政府を追い詰めかねない。

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BBC NEWSJAPAN EPAより

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