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【 トルコ シリア侵攻 】Sorry no English!

2019/10/18

シリアに侵攻したアサド政権は、トルコと対峙するため北部に展開し始めた。アサド政権に影響力を持つロシアが、アサドに北上し、トルコと対峙することを許したということだ。
アメリカのパワー・プロジェクションが後退する中、中東のパワーゲームが大きく変化することになる。

数日前、トルコがシリア国境を越え、クルド人勢力の掃討を目指し侵攻した。空爆と地上からの爆撃で、クルド人数百人が殺され、16万人以上が避難を余儀なくされていた。

クルド人勢力が管理していた収容所からはイスラム国の兵士と、サポーター、家族200人以上がすでに逃亡した。マティス前国防長官が指摘したように、イスラム国が再び台頭する可能性がある。

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トルコ軍の越境軍事作戦により攻撃されるシリアの町ラスアルアイン。トルコ側のジェイランプナルから撮影(2019年10月14日撮影)。(c)Ozan KOSE / AFP

エルドアン大統領は6ヶ月以上前からシリア侵攻を計画してきており、この数ヶ月国境沿いに軍を集中させていた。
アメリカはクルド人勢力をテロ組織とみなすトルコの不安を払拭するため、国境沿いで、トルコとの共同パトロールまで行ってきた。アメリカのエスパー国防長官の「なぜ、今トルコがシリア侵攻を決行したか説明がつかない」と12日に指摘している。

トランプとエルドアンの電話会談で、実際に何が話されたかはわからない。しかし、トランプは8日「特別で素晴らしいクルド人を見捨てるわけがない」「武器でも財政面でもクルド人を支援する」とツイートしている。
「クルド人を攻撃すれば、アメリカはトルコに経済制裁を課し、トルコ経済や通貨を壊滅させる」とも公言してきた。

しかし、「トルコとクルド人は長い間、戦ってきた。そうしたいならそうさせればよい。アメリカは、しっかり注視し続ける。この終わりのない戦いを」ともツイートしている。
アメリカは傍観に徹する、ともとれる言葉だ。

アメリカ議会は「電話会談でエルドアンの侵攻を容認した」とトランプ大統領を非難。
トランプが、数日前、トルコ国境沿いに駐留していた米兵50人を別の地域に移動させた。これが、エルドアンに間違ったメッセージを送った可能性はある。
移動した米兵の一人は「軍に入ってから、最大に恥を感じる行為だ」と語った。

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シリア北部テルアビヤドを歩くトルコ軍側のシリア反体制派兵士(13日)=ロイター

イスラム国掃討で、アメリカ主導の西側の「有志連合軍」と共に戦った「シリア民主軍(SDF)」の主力メンバーはクルド人達だ。彼らはまさに命をかけて、地上戦で IS打倒を目指し戦った。

空爆に徹した米軍の死者は、数える程でしかないが、クルド人の犠牲は11000人を超える。彼らが、ここまで必死に戦ったのは、「アメリカにとって、重要な同盟者と認められれば、アメリカがクルド人を守ってくれる」と考えたからだ。

しかし、アメリカはこのクルド人たちの思いを裏切ろうとしているかのように見える。
クルド高官は、数日前にロシアのラブロフ外相と会い、「保護」を求め、アサド政権にすら「北部での自治を認めてくれるなら忠誠を誓う」と交渉している。
「アサドを信じられるとは思っていない。しかし、クルド人虐殺を避けられるなら・・・」苦渋の選択だ。

NATOでアメリカに次ぐ兵力を持つトルコとクルドでは、火器の量や最新兵器を含め、勝負にならない。
これまでトルコ軍の侵攻を抑えてきたのは米軍の国境地域への駐留だった。

NATOのストルテンバーグ事務総長はエルドアン大統領と11日話をしたが、侵攻を断念させることはできなかった。ロシアのプーチンは「いかなる外交勢力も違法にシリアにいるべきではない」としたが、その真意は不明だ。

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11日、イスタンブールで演説するトルコのエルドアン大統領。シリア北部の少数民族クルド人勢力への軍事攻撃に踏み切った(ゲッティ=共同)

EUのメルケルとマクロンは「トルコは直ちに侵略をやめるべきだ」と非難したが、これに対し、エルドアンは「これを侵略と呼ぶなら扉を開き、トルコにいる360万人のシリア難民を欧州に送る」と脅した。
シリアに侵攻した数日前、トルコは地中海のキプロスを囲む形で艦船20隻を派遣してもいる。

キプロスを包囲され、難民問題を人質に取られた EUがどれほど強い抑止力を発揮できるかは、大いに疑問だ。

トルコの侵攻は、大きく内政問題の悪化に起因する。
トルコリラが弱くなり、インフレが進む。8月から9月のニンニクの値上がりは40%を超えた。外貨建て債務が膨張し、企業の倒産が起こり、失業者が増えている。
なんとか外に敵を作り、国内の結束を強めたい。

「安全地帯」という美しい呼び名を持つ地域をシリア国内に構築し、経済の負担になっている360万人のシリア難民をそこに送り返したい。

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トルコ軍によるシリア北部への地上作戦で、戦闘の激化に伴い居住地を追われる避難民(毎日新聞)

11日、米軍の駐留拠点近くにトルコ軍による砲撃があったことも、米国内の対トルコ感情を悪化させ、国防総省は「我々の迅速な防御的措置を引き起こしかねない行動をトルコは控えるべきだ」と警告した。

しかし、13日、トランプは北部に駐留する約千人の米兵の撤収を決めた。エスパー国防長官は「トルコの軍事作戦は想定よりも広範囲に及び、米兵の安全確保が難しくなった」と説明した。
エスパー国防長官は「計画的に撤収する」としたが、シリア南部に移動しても、シリアからは撤退しないと米メディアは報じた。

アサド政権がクルド人勢力に加担するならば、国境沿いに駐留していた米軍は、トルコ軍とシリア軍に挟撃させる可能性があった。実際、アサド政権はクルド勢力と手を結ぶ方針を決めた。ということは後ろにロシアがいるということだ。

議会や国防総省は、強硬な措置を求めている。
しかし、トランプは、米兵に戦闘させたくない。人的被害は最小限に抑えたい。
トランプは、2016年の大統領選中から、シリアやアフガンから兵を引き上げたいと本気で考えている。中東でアメリカが疲弊するのは避けたいのだ。

できるなら「経済制裁」を武器にトルコの抑止を狙いたいと考えていると思える。

トルコ経済は薄氷の上に成り立つ。
マイク・ペンス副大統領はスティーブン・ムニチン財務長官とともに、ホワイトハウスの西棟外の記者団と、2019年10月14日月曜日にワシントンで話をします。 米国は、シリアのクルド人に対するトルコのストライキの即時停戦を求めており、調停努力をリードするためにペンスを送っている(AP Photo / Jacquelyn Martin)

Vice President Mike Pence, with Treasury Secretary Steven Mnuchin, speaks to reporters outside the West Wing of the White House, Monday, Oct. 14, 2019, in Washington. The US is calling for an immediate ceasefire in Turkey's strikes against Kurds in Syria, and is sending Pence to lead mediation effort (AP Photo/Jacquelyn Martin)

14日、アメリカはトルコへの経済制裁を発動。
「鉄鋼輸出への50%の追加増税」。
さらに「11兆円規模になるトルコとの貿易交渉を中断」した。

EUも、兵器をトルコに売ることを停止。
フォルクスワーゲンは、トルコに新しい工場を建設することを延期した。1500億円規模のプロジェクトだった。

一気に壊滅的なダメージを受ける可能性がある。トルコで金融危機が発生する可能性もある。

アメリカの今回の措置で、中東でのロシアの存在感が増すことは確実だ。プーチンは昨日サウジを訪問しサルマン国王と会談した。

アメリカ、ロシア、イラン、トルコ・・・世界の大きなプレーヤーたち、地域大国の思惑が交差する中東の行方は、まだはっきり見えてこない。

クルド人たちは、常にその大国の思惑に引きずられ、利用されてきた。
悲しいことだが、イラク、シリア、イラン、トルコにまたがる民族が本当に結束して動くことができなければ、建国の夢は遠い。

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