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【 サウジの心臓部への攻撃で価格15%上昇・高まる不安定性の懸念 】

14日、未明に行われたサウジの石油プラントの心臓部へのドローン攻撃で、サウジの生産は日量約570万バレル減少した。
これはサウジの生産量の約半分で、世界の供給の5%以上に相当する。

国際指標の北海ブレント原油先物は先週末より18%上昇。ニューヨーク市場でも1バレル63ドル台と先週末より15%上昇した。アメリカのダウ工業株も100ドル近く下落し、景気の減速懸念が広がる中、下押し圧力が高まる物価高を懸念する声が高まった。

サウジは備蓄を放出する構えで、アメリカも備蓄放出の用意があると発表。
国際エネルギー機関(IEA)は「6月時点で民間分も合わせると330日分の備蓄が確保されており、十分な商業在庫がある」と声明を出した。
IEAは加盟国に、準輸入量の最低90日分の備蓄を義務付けてきた。

無人機攻撃後に炎上するアブカイクの石油施設 出典:Planet Labs Inc.

また、これまで原油の供給はだぶついており、 OPECとロシアなどは「協調減産」を行ってきたため、今後生産量を増やす余力はある。
価格が高くなり過ぎれば、消費国の石油離れを加速する恐れがあり、産油国はそれを望んでいない。

車社会であるアメリカでは、市民はガソリン価格に敏感で、トランプ大統領は米欧の主な原油市場の取引が始まる5分前に前日の高官の言葉を裏付けるように「潤沢な供給が維持されるよう十分な量を必要に応じて放出する」とツイートした。

個人消費が悪影響を受け、景気が悪化すれば、「イラン政策の失敗」と政権批判につながる恐れがある。
IEAは主要先進国で協調して備蓄放出に踏み切るよう呼びかける構えだ。

今回の攻撃は原油の供給を中東地域に依存するリスクの大きさを印象付けた。

イランの支援を受けるイエメンのフーシ派が「ドローン10機で攻撃した」と、犯行声明を出したが、いくつかの疑問点が浮かび上がっている。

ポンペオ国務長官は「攻撃がイエメンから実行された証拠はない」と述べ、別の高官は「商業衛星写真を分析すると、サウジの施設19カ所が攻撃を受けた。10機のドローンで19カ所を攻撃することはできない」と説明。
「クエート政府は自国の上空を飛行する無人機を発見していた」との報道もある。もし、それが事実であるならば、イランかイラクから無人機が飛び立った可能性も残る。

また攻撃された施設はサウジ東部にあり、イエメン国境からは遠く、ペルシャ湾に近い。

ドローンに攻撃されたサウジアラビアの石油施設(写真:ロイター/アフロ)

いずれにしろ、サウジのミサイル防衛システムは今回の攻撃を防げなかった。
国連は今年に入り「フーシ派が長い飛行能力を持つ最新鋭の無人機を導入した」という報告書を発表。
フーシ派は、6月には1200キロもの長距離を飛行し、正確に攻撃することに成功した。

中型の無人機は製造もメンテナンスも、ミサイルに比べ格段に安い。フーシ派はこれまでに100回以上、無人機を使ってサウジを攻撃したとされるが、途中で捕捉される確率が低まっていた。

サウジは性能の高いドローンは「イランから供給されている」と疑う。
米ニューヨーク・タイムズは、「イランはフーシ派の戦闘員らを招き、無人機の扱いや修理法を訓練している」と報じた。
イランは否定している。

犯行がどの勢力によって行われたか、現段階ではわからないが、今回の事件が明確にした事実がある。

産油国の石油施設は脆弱であり、ペルシャ湾岸地域の政治的不安定さがリスクを押し上げていることだ。ドローン技術の進歩がそれに拍車をかけている。
ドローンの製造費は比較的安いが、対空防衛システムの構築には技術力も費用も時間もかかる。様々な技術の進歩で、全ての飛翔体をブロックするのは不可能に近くなりつつある。

ドナルド・トランプ米大統領(左)とイランのハッサン・ロウハニ大統領(右、2018年7月23日作成、資料写真)。【翻訳編集】 AFPBB News

6月のタンカー襲撃事件で、船にかける保険料率は一時、それ以前の20倍に膨らんだ。
産油国も多角化を目指し、ホルムズ海峡を通ってくるのは原油だけではなく、エーテルやポリプロビレンなどの石油化学品、アルミ地金、銅などに広がっている。

ペルシャ湾のシーレーンが危険にさらされれば、日本の製造業のサプライ・チェーンも影響を受ける。調達先の多様化も急がれるが、すぐには進まない。
日本にとっても、アジア全体にとっても、この地域の安定は非常に重要だ。

9月後半NYでの国連総会で、トランプ大統領はイランのロウハニ大統領との会談に前向きだったが、実現のハードルが高まってしまった。

最後に一つ。
日本でも一部で荷物の配送などに使われ始めたドローン。
便利になって本当に良いことだと思うのだけれど、きちんとしたルールを決めなければ、安全面でも大きな混乱を引き起こす可能性がある。

新しい技術を使いこなすには、そのための共通の知識やルールづくりが不可欠だ。でなければ、ゲリラ的な悪用をする人々が出てくるかもしれないからである。

 

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