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【香港の抗議活動が極限の緊張に!】

2019/08/17

10週目に入った香港の抗議活動。場所は街頭から飛行場に移り、要求も、逃亡犯条例撤回から、今や民主化全般に広がりつつある。
しかし、政府と市民の間の緊張は高まり、ギリギリの極限状態に達している。
中国政府は、香港のすぐ近くに人民解放軍の武装警察部隊を集結させている。

衛星写真を提供するマクサー技術( Maxar Technologies)は、人目に触れないよう香港に隣接する深センのスタジアム内に集結する軍、もしくは治安部隊の車両の映像を公開した。12日に撮影されたものだ。

深セン市のスタジアムの中に集結する車両(BBCより)

スタジアムに集結する車両(GETTY EDITIONAL)

また、香港警察は「抗議者を装った秘密警察官を民衆の中に紛れ込ませている」と認めた。

これらが引き起こす恐怖が、空港に集まった若者たちを緊張の淵に追いやり、火曜日、2つの暴力事件が起こってしまった。
一つは、「中国本土からの記者」とされる男が暴行され、映像が流された。
もう一つは市民らに取り囲まれた警察官が警棒を取り上げられると、狂ったように銃を抜き、群衆に向けた。他の警察官が急いで彼を「救出」したため、幸いなことに引き金は引かれなかった。

これらの事件を取り上げ、香港政府は「警察官の命が危険にさらされている」
「抗議者らはテロリストのような行動をしている」と糾弾している。

果たして、命が危険にさらされているのは警察官の方なのだろうか?

警察と衝突するデモ参加者(BBCnewsより)

国連の人権高等弁務官バシュレ氏は、「政府は至近距離から、あるいは閉ざされた空間の中で、直接、市民に向け催涙弾を何度も打ち込んでいる。これは非常に危険な行為で死者や重傷者を出しかねない」と警官の行動を強く非難している。

ラム女史が「抗議は、危険で、取り返しがつかないラインを超えてしまった」と発言し、深センに集結した中国人民軍の映像をわざと公開し、「抗議者はテロリストのようだ」と繰り返す。
これでは、市民を威嚇し、過剰反応を誘い、「北京政府の暴力的介入の地ならしをしているのではないか」、と疑われても仕方がない。

デモのもたらす危機的状況に改めて警鐘を鳴らした香港の林鄭月娥行政長官/Kin Cheung/AP

一方で、飛行場の抗議者の数は激減し、彼らは「火曜の事件は本当に申し訳ない。恐怖にかられ、絶望的な状況の中で私たちは間違った判断をしてしまった」と謝罪し、飛行場に到着した旅行客に謝罪のビラとチョコレートを手渡した。

誰が、脅していて、誰が脅されているのか?

旅行者への謝罪を示すデモ参加者(ウォール・ストリート・ジャーナルより)

拙著「エルドアンのトルコ」のクーデター未遂事件の解明でも触れたように、素手の群衆がどれほど必死に戦っても、装甲車両や戦車に乗り、マシンガンの引き金を引くことをためらわない治安部隊や兵士の前ではひとたまりもない。

私たちはみな、「天安門事件」を忘れていない。
7週間続いた学生や市民たちの抗議活動は共産党の人民解放軍の投入にあっという間に鎮圧された。
外国のマスコミは締め出され、情報は急に途絶えた。
私たちは天安門広場で何が起きているか、その時に知ることはできなかった。被害者はせいぜい、数百人から2千人とされていた。
しかし、最近公開された英国の外交文書によれば、当時の駐北京イギリス大使は「殺害された人数は少なくとも1万人に上る」と本国に報告していたことがわかった。
戦車が何度も遺体を弾き、ブルドーザーがハンバーグを作るように集め、一部は焼き、一部は下水道に流した。速やかに処理するためヘリコプターも出動した。

天安門事件、当時の様子(1989年6月4日撮影)。(c)AFP PHOTO / Manny CENETA

香港の人々がどれほど必死の思いか、想像できるだろう。
彼らは今、ここで譲れば、すべての声がかき消されることを知っている。
海外からの「眼」がなくなれば、再び天安門の殺戮が繰り返される。

彼らが望んでいるのは、香港返還時に約束された「一国二制度」のもと、「言論の自由」と「法の支配」、そして「自分たちの代表は北京が決めるのではなく、自分たちの投票で決めたい」ということだけなのだ。

香港空港に集結した民主派のデモ隊(2019年8月12日撮影)。(c)Manan VATSYAYANA / AFP

14億の民を「強大な北京政府からの脅し」を様々な形で10週間も受け続け、絶望的なストレスと恐怖にかられている彼らのために、今、私たちにできることは、
「私たちは、決して天安門事件を忘れない」
「万一、天安門事件のような悲劇が起これば、国際社会はあの時以上の厳しさで北京への経済的圧力をかけることをためらわない」と表明し続けることなのではないだろうか?
国民のボイコットだけではなく、日本国家としても、そう表明してほしい。
「徴用工問題は国家として約束が交わされた。それを一方的に破るという行為は許さない」というのであれば、又、中国政府が、イギリスと交わした香港返還時の「中英連合声明」を守ろうとしないことは非難すべきだ。
一つの横暴を認めれば、次の横暴へ道を開くことになるのは、歴史が証明している。
強大な隣国の横暴は、他人ごとではないのだから。

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