松富かおり 公式ブログ

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【米朝会談、席を立ったトランプの勝利】【The Victory of Trump who Walked Away】 (English follows after Japanese)

2019/08/02

ハノイで行われたトランプと金正恩の会談の突然の決裂。
最初の感情は驚きだったが、それはすぐに安堵に変わった。
外国の政治家と多少接してきた経験から、如何に米欧の政治家が、東アジア情勢やその歴史に疎いかという点に関しては、非常に残念な思いがあったためだ。

会談場のホテルの庭園を並んで歩くトランプ米大統領(右)と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長=28日、ハノイ(ロイター)

予想通り、第一回の米朝会談は派手な政治ショーに終始した。
今回も、美辞麗句に踊らされ「朝鮮半島の完全なる非核化」を目指して「実りのない会談」を重ね、その間に実質的には北朝鮮が裏で核施設などの拡散と充実を図る時間を与えてしまうのではないかと危惧していたからだ。

トランプが、「席を立たねばならない時には、席を立つ。」と断固とした態度を取ったのは戦略的にとても正しかったと私は思っている。
国内でのトランプの苦境を見て足元を見た金正恩にとっては非常に痛い教訓になったことだろう。

トランプは会談の前から「非核化を急いではいない」と繰り返し発言している。
これはシンガポールで会談した時とは明確に異なるスタンスだ。アメリカは衛星からの監視や様々な情報ソースから、北の動きをかなり詳細に把握していた。
「北が核を完全放棄する可能性は低い」と見て、戦略自体を変更する準備がある程度なされていたのではないだろうか。

3月1日、ベトナムの首都ハノイで開催された米朝首脳会談が物別れに終わったことについて、北朝鮮の国営メディアは、建設的な協議だったなどと大きく報道する一方、合意に至らなかったことには触れなかった。写真はハノイで28日撮影(2019年 ロイター/LEAH MILLIS

「交渉の破綻要因」
交渉における双方の認識の大きな違いは2点に集約される。

■ 北は300以上の施設がある「ニョンビョンの廃棄」は重大なカードだと思っていたかもしれないが、アメリカはそれ以外にも「カンソン」などウラン濃縮施設や複数のミサイル基地の存在を把握している。ニョンビョン以外にウランを濃縮できる施設は最低2つ確認されている。
複数の報道によると、秘密にされたままの関連施設は10を超える。ニョンビョンだけの廃棄では、北の「核能力」は残される。

■ 第2点は、「制裁解除の範囲」だ。北の李外相は異例の深夜の記者会見で「求めた制裁解除は一部だけだった」としたが、これには実はアメリカは同意できない。
確かに李があげた項目は全てでは無かったが、国連が科した制裁の最も効果的な5項目を含んでおり、これを解除すれば「制裁」の効果が激減され、アメリカが北を追い詰める梃子を失う結果になる。
トランプが「見返りに経済制裁の完全解除を求めた」というのはある意味で正しい。表現は正確ではないが、現実的には「ほぼ全て」だったのだから。

平壌から片道60時間もかけて列車でハノイ入りした正恩は、初日に揚げ春巻きを賞味し、翌日11時少し前からのトランプとの会談に意気揚々と乗り込んだ。
しかし会談の雲行きは急速に悪化。3時間後にはアメリカ側から昼食会と合意文書の署名式のキャンセルが一方的に伝えられ、正恩は狐につままれたような不機嫌な顔で会場から去ることになる。

午後3時過ぎにはホワイトハウスから「合意には至らなかった」との発表がなされ、トランプは「私達が求めるよりも重要でない範囲だけで、あたかも『非核化』をやろうとした」として、2時間後にはさっさとホテルを後にした。
ポンペイオ国務長官は「北は取引に応じる準備ができていなかった」と説明。

写真は、昨年行われた第1回米朝首脳会談の中止について述べるトランプ米大統領=ロイター

金正恩は経済制裁でかなりの苦境に陥っており、経済を再建できなければ、彼の長期政権を維持することはますます困難になる。
ガソリン不足で平壌から車の数が激減し、1日に電気が使える時間も数時間だ。この制裁が効いていることは正恩の言動からも読み取れる。彼は、制裁解除に固執しすぎていた。
今回のベトナムでの滞在費すらベトナム政府が負担したとみられている程だ。

旧式の列車で片道60時間、往復120時間移動しなければならないというのはエアフォース1で10数時間で移動できるアメリカのケースを考えると、前時代的ですらある。
尤も、「偉大な祖父」金日成と同じ行程を通ってハノイに出迎えられる、というパフォーマンスには、多少の国内向けの成果があったと思われるが。

「今回の決裂が残したもの」

■ 決裂はしたが、シンガポールの第一回の会談で事実上の了解事項となった、将来の完全非核化に向けて、「アメリカは北朝鮮に対する侵攻をシミュレーションした本格的な米韓軍事演習は控える」、「北は、ICBMの発射テストは行わない」というルールは今も生きている。

■ また、今後の外交チャネルでの話し合いへの道は閉じられていない。実際アメリカは「大規模な米韓軍事演習は取りやめる」と発表し、「規模を縮小した『訓練』に切り替える」とした。これは今後、話し合う余地はあるというメッセージだ。

2017年には、両国が戦争寸前までの緊張関係にあり、アメリカは北朝鮮に非常によく似た地形の場所で、様々な攻撃のシミュレーションも行なっていた。
また、化学兵器を使用したシリアのアサド政権へのトマホーク・ミサイル攻撃に関し、当時のティラーソン国務長官は「これは北朝鮮へのメッセージでもある。アメリカはある国が他国への脅威になるならば、対抗措置をとる」とプレスに向けて発言している。実際にアメリカは、空母カールビンソンまで派遣し、北に「最大の圧力」もかけてきた。

金正恩は、二度とその危険な状況に戻る危険は冒せない。

何より怖いのは、トランプが、従来の「良識」や「外交慣例」に縛られない「予測不可能な大統領」であるという点だ。
到底オバマのような「戦略的忍耐」など期待できない。

北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長(写真)(2019年 ロイター/KCNA via REUTERS)

正恩にとって今後、アメリカがただの脅しをかけているだけなのか、あるいは本気で武力攻撃も辞さない覚悟でいるかを判断するのは非常に難しい。万一、計算を誤れば金王朝は完全に破綻する。

私は、正恩は巷に言われるように「狂気の独裁者」だとは考えていない。むしろ事実をかなり的確に分析してブラフをかけてくる頭脳を持った人間だと思っている。
アメリカの対応によほど自信を持てない限り、オバマ時代のような大規模な核実験やICBMの発射実験を行う事はできないだろう。

これまで、「将来の非核化」を餌にのらりくらりと時間を稼いできた方法は通用しない。アメリカは現状のままでかなりの時間耐えることが出来る。一方、北は制裁解除に向けて何らかの手を打たなければというプレッシャーにさらされ続ける。「対話は続けるが重要なものは渡さない」という北がこれまで得意としてきた手法を逆手に取られた形だ。

アメリカにとっては、当面、北が ICBMの発射実験を行えず、アメリカ本土に確実に着弾するミサイルが完成されない限り、かなりの余裕を持って北朝鮮問題に当たることができる。トランプが地球を約半周してハノイまで赴いた成果は十分にあったのではないかと思っている。

ただし、このアメリカの「封じ込め作戦」への転向は日本にとっては満点回答ではない。アメリカ本土へ届く ICBMの完成までには、ミサイルを大気圏に再突入させ無事に着弾させる、という最も微妙な技術的問題が残されているが、日本に届くミサイル技術は、もう北は獲得している。根本的な「北の核の脅威」は無くなっていないのだから。
しかし、今の日本には、このチャンスを生かしてさらなる拉致問題での譲歩を引き出すべく通行活用する選択しかないのではないか?

会見を終え、エアフォースワンに乗り込むトランプ大統領(ロイター 2019年)

トランプは帰国途中のエア・フォース1から、安倍首相とムン・ジェイン大統領に電話で報告をしている。
ムン大統領にとっては信じがたいほどのショックだったであろう。

彼の心の内には「南北朝鮮統一ができれば歴史に名を残すばかりか、核を手に入れ、日本などに気兼ねもいらなくなる」という計算があった筈なのだから。それが最近のいわゆる慰安婦問題、徴用工問題の蒸し返しやレーダー照射事件の根底にあったものだ。

<中国>
正恩は習近平と会談し、アメリカへの対応の相談をしてきた。習近平は勝手な言動の正恩を嫌って5年間会わずにいた。にも関わらず、2018年3月以降4回も会う特別扱いで、「中国抜きの米朝和解は許さない」という意地が見えた。
帰路でも会うのではという観測があったが実現しなかった。全人代で忙しいということだけが理由ではないだろう。
習近平は正恩に呆れ、正恩もまた「中国に頼るだけでは、道は開けない」と悟ったのではないか?

アメリカと既にトラブルを抱えている習近平にとっては、正恩を煽ったと見られるのも都合が悪いことだろう。急遽米朝首脳会談へ動いたトランプのせいで、正恩を嫌っていた習近平は正恩への最大の譲歩をしてきたが、どうやらその努力は実を結ばなかったようだ。

<ハノイ会談後の動き> 
5日になり、アメリカは北朝鮮のミサイル施設で新たな動きを確認し、報道している。然し、これが「ハッタリ」以上のものかどうかは、疑わしい。
アメリカのシンクタンク「38 NORTH」と韓国の情報機関が確認した情報によると、北朝鮮のミサイルサイトの再建工事はハノイ・サミット終了以前から始まっていた模様。
ボルトン氏は「もし、本気で再開しようとしてるなら、経済制裁解除はあり得ない」と発言。アメリカの上院は「今後北朝鮮といかなる形でも取引を行った銀行には制裁をする」という追加制裁の法案を模索している。
去年の北朝鮮の農作物の出来は、この10年で最悪を記録した。経済は3〜5%のマイナス成長と試算されている。北の国民生活の困窮の度合いは強まっている。

【The Victory of Trump who Walked Away】
The sudden end of the Hanoi Summit of Trump and Kim Jong-un surprised me.
The relief replaced surprise before long.
I have been worried about how little American and European politicians know about the international relations and history in East Asia.

@REUTELS

As I worried, the first Trump-Kim summit was not more than a flashy political show. It made me afraid what if Washington was trapped in the typical endless and fruitless conversations with the North Korea to only allow it to develop its nuclear capability under the beautiful rhetoric of “Complete denuclearization of the Korean Peninsula”.

I believe the action of Trump to walk away was strategically right.
It must be a very painful lesson for Kim Jong-un.

Trump has repeated that “NO Rush!” before the meeting. It was a stark shift of his attitude when they met in Singapore before. The US has collected so much information on North Korea’s behavior from many sources.
There is a possibility Washington had some contingency plans when it became clear that Pyongyang would not terminate its nuclear program.

@REUTELS

The two major differences between two players
Pyongyang thought it was a significant card to offer to dismantling the Yongbyon complex, which has around 300 facilities and has been a heart of its nuclear program. Washington, however, has learned there are at least two more facilities where uranium is enriched. Some reports say there are 10 more facilities for the nuclear program. Given such information, Trump could not make a deal only on Yongbyon.
It could have left North Korea’s existing nuclear arsenal and capability intact.

Ri Yong-ho, the Foreign Minister of North Korea, had an unusual press conference in the midnight to appeal they only asked some sanctions to be lifted. The US insists Kim wanted all sanctions lifted.
Neither is completely wrong.
North Korea demanded the elimination of the 5 most severe sanctions of the UN security Council had posed. If the US lift them, it would have lost leverage to influence North Korea. In that sense, Trump’s remark was true.

After 60 hours train trip to Hanoi, Kim Jong-un enjoyed the tasty spring roll and arrived in the good spirits for the meeting with Trump next morning. It was a little before 11 o’clock. The atmosphere, however, had changed rapidly.
Three hours later the US side cancelled the lunch and all the remaining schedule. Kim was forced to leave the meeting with grim face

The White House announced there was no agreement and Trump appealed, “The North Korea wanted the sanctions lifted in their entirety. Sometimes you have to walk and this was one of those times.” He left the hotel in 2 hours.
Mike Pompeo, the US Secretary of State, reaffirmed that North Korea had, “basically asked for full sanctions relief” and said “North Korea was not ready to offer”.

@REUTELS

We could see Kim was in such a trouble because of the sanctions. Some say there are very few cars in Pyongyang because of shortage in fuel. Others say electricity is available only a few hours a day.
The costs to stay in Vietnam was said to be covered by Hanoi.
It will be difficult for the Kim regime to survive with all those severe sanctions.

It might have a political point to show the legacy of his grandfather to the people back home by imitating a train trip to and warm welcome in Hanoi. But it does not feed the people in North Korea.

The two wishful thoughts after the meeting.
The Singapore understanding is still in place. The US will not conduct major joint exercise with South Korea simulating the invasion of North Korea. In return, North Korea will not conduct ICBM test, which matters most for the US.
The door for the dialogue is not closed. The decision of Washington to replace large scale joint exercise to small training with Soul is a message to Pyongyang to this effect.

Now Kim cannot afford miscalculating. Even a mistake could lead the termination of the Kim dynasty.

In 2017 two countries were at blink of war.
The US conducted the simulation exercise of striking North Korea in the place which has very similar landscape in the US mainland.
The former Secretary of States made it clear that the bombardment to Syria was the message to Pyongyang as well. Washington even dispatched Karl Vinson, the aircraft carrier to pose the most powerful pressure to the North Korea.

@REUTELS

The most terrible thing is that Trump is the most unpredictable president in the US history. Kim cannot hope either “The strategic patience” or “rules of conventional diplomatic process” from him.
I don’t think Kim Jong-un is a “mad tyrant”. He is a logical and canning strategist with sharp brain.
It means he won’t conduct large-scale nuclear tests or ICBM tests unless he is very sure Washington is only bluffing. It is almost impossible to exclude possible US strikes with 100% confidence.

He cannot indulge himself by playing with other countries in the endless diplomatic process any more. The title of “ Master of stall tactics” now belongs to Trump.

The US has time to deal with North Korea as long as they are sure it does not have nuclear missiles reachable to the US mainland. There is NO NEED to Rush.
Washington seems to have sifted their tactics for the containment. Honestly speaking, however, it is not good enough for Japan, because North Korea has already developed and deployed intermediate range missiles reachable to Japan.
Trump made a telephone call to PM Abe and president Moon Jae-in from the Air Force 1 on the way back.

@REUTELS

It must have been such a shock for Moon, because he must have some plans in his mind.
I assume he had a dream to make his name in the history by unifying the Korean peninsula. the US-North Korea certain agreement would be a starting point for the goal. When he obtains nuclear power from North Korea, he would not have to count on the cooperation with Japan any longer. I think it was the calculation underneath of the recent bizarre incidents such as fanning so-called historical issues and even the radar irradiation by the naval vessel.
P.S. Washington delivered the images which show Pyongyang started new actions in the missile complex. But we are not sure if they are more than bluffing. U.S. National Security Adviser John Bolton responded saying, " If the construction is in fact underway, North Korea can forget about sanctions relief."

The food production of the North Korea marked lowest in a decade and the economy is assumed to have shrunk by 4~5% in 2017. The people are suffering very badly in the North Korea.

 

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