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【とうとう、米中の経済戦争が本格化した】【The Economic War has Begun】

2019/03/07

目に見えるようになったのはここ最近だが、これはとっくの昔に始まっていた。アメリカはすでに「第2の冷戦」の一つとして中国との「経済戦争」を長期的に続ける覚悟だ。背景には「ハイテク覇権」の争奪戦、「ドル基軸通貨性を脅かす中国」への危機感がある。もちろん中国が軍事費を拡大し、海軍の増強に邁進していることも念頭にある。大国の興隆をかけたこの戦争で、アメリカが簡単に引き下がるはずはない。

GETTY IMAGES

2017年秋、習近平国家主席が「2050年までに『中国的特色のある社会主義現代化強国』になる」と宣言。 中国の台頭を懸念するトランプ政権は12月に「国家安全保障戦略」を発表し、「インド太平洋地域でアメリカの価値観や利益に反する世界を作ろうとする『修正主義国家』」として中国をあげた。今年1月の「国家防衛戦略」では「略奪的な経済手段を用いて近隣諸国を脅す一方南シナ海での軍事化を推進し、アメリカの影響力の弱体化を目指す『戦略的競争相手』」として中国をあげ防衛体制に入ることを明示している。戦略的競争相手にはロシアも含まれ、「防衛」の手段には「力による平和の維持」も含まれている。

周近平国家主席(CHRIS RATCLIFFE /POOL/EPA-EFE/REX/EPA/SHUTTERSTOCK)

13年に習近平氏が掲げた「一帯一路」構想で、沿線64カ国では周辺国のインフラ整備に資金を出す代わりに「元の国際化」に巻き込み、「借金」が返せない国の港湾施設や空港の管理権を譲渡させるという状態が続いてきた。「海洋強国」を目指す中国がインド洋・東シナ海で整備支援などの協定を結んだ港湾は30を超える。これまでにスリランカなど7つ以上の港湾の利権を握った。この、「経済」で先行し、次には「政治」、「軍事的」影響力を行使しようとする手法にアメリカは大きな危機感を表明してきた。ようやく、アジア諸国の間でもこの手法に対する懸念や疑念が生じ、マレーシアなどで計画を見直す動きにつながっている。

その大きな手段となった 「AIIB-アジアインフラ投資銀行」に加わらなかったのは主な先進国では日本とアメリカだけだ。EU加盟国28のうち、半数が加盟し、E Uの政策金融機関である「欧州投資銀行」は「一帯一路」に関連しAIIBとの連携に強い意欲も表明している。ドイツBMWは昨日、中国の出資合弁会社の出資比率を50%から75%に引き上げると発表したばかり。

2016年の昨年1月のAIIBの開業式典(新華社/AFLO)

NATO首脳会議で「ロシアを仮想敵国とする同盟国でありながら、ロシアのガスを購入することで敵国ロシアに資金を流している」というトランプ大統領の非難は、数年前まで無条件に中国からの資金流入を歓迎し、マーケットとしての中国にすり寄ってきたドイツへの憤懣が背景にあった。イギリスもまた、メイ首相の中国訪問で今年2月に中国と132億6千万ドルを超える契約を締結している。NATOにおいて「十分な防衛費を負担していない国」がアメリカの「戦略的競争勢力」への依存を続けることにアメリカの苛立ちが根ざしていることは明白だ。

今後の世界では、ますます「第2の冷戦」の構造が明確化してくるだろう。現在のところアメリカのターゲットとはっきりしている国は中国、ロシア、イランだが、NATOの同盟国でありながらロシアの S-400地対空ミサイル防衛システムを購入し配備しようとしているトルコへの圧力も強まって8月の「トルコ・ショック」はその一つの表面化に過ぎない。今後、「第2の冷戦構造」を無視して「経済戦略」「外交戦略」を取ることは難しくなるだろう。

トルコショック トルコの通貨リラの暴落はグローバル市場を揺さぶった(写真は8月17日、イスタンブールの両替所)=ロイター

現在までにアメリカは「自由で開かれたインド太平洋戦略」に基づき、地域でファンドを立ち上げる構想を表明し日本は協力する方針だ。南シナ海での「航行の自由作戦」にはアメリカのほか、日本、オーストラリア、イギリス、フランスの艦船が参加し「自由主義」という価値を共有する国々の連帯を示している。「自由」「民主主義」「人権」「法の支配」「市場主義経済」―― 日本の立場も、今後試される時が来るだろう。第二次大戦後世界の秩序をリードしてきたこれらの価値観が揺らがぬよう心から祈っている。

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